葛飾北斎(1760~1849)と歌川広重(1797~1858)は、特に有名な江戸時代の浮世絵師です。
北斎は多くのエピソードを持つ個性的な芸術家で 例えば、師匠から弟子へと門外不出で伝えられた浮世絵師の技術を惜しげもなく教本にして出版したり(※1)師匠から頂くありがたい雅号を生涯で30回も変えたり(※2)、93回引っ越しをした(※3)と言われています。
いっぽう 北斎より37歳年下だった広重は、雅号を変えることなく(※4)教本を出すこともありませんでした。「冨士見百圖初編/富士見百図初編」(1859)は北斎の「富嶽三十六景」(1831~33)への競争心で作成されたといわれ、その序文では北斎へのライバル心が伺えます。(※5)
葛飾北斎「略画早指南 (りゃくがはやおしえ)」上巻 (1812)
※1 略画早指南(りゃくがはやおしえ)
上(1812)下(1814)巻セット。
定規とコンパスを使い、三角、四角、丸をもとにうまく絵を描く方法を教えてくれます。江戸時代にコンパスがあったとは意外です。
※2 雅号
雅号を弟子に売って収入源にしていたと言われています。
20歳 春朗 (しゅんろう)師匠に内緒で洋画や他流派の画法を学び破門。
36歳 宗理(そうり) 肉筆画が多く、洋画の影響も強い時代。
45歳 北斎(ほくさい) 日蓮宗の北斗七星信仰にちなんだとも、「あほくさい」の略とも言われています。
50歳 戴斗(たいと)「北斎漫画」出版。
60歳 為一 (いいつ) 「冨嶽三十六景」出版。
75歳 画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ) 「冨嶽百景」出版。
※3 引っ越し93回
片付けが大の苦手で、画材が散らかるたびに引っ越したと言われています。