会場の ICC Sydney
オペラハウスの近くでした.
7月にシドニーで開催された CogSci2023に参加しました。
初日のワークショップで
「これからの認知科学はインタラクション (相互作用) で全て説明できるのではないか」
という思い切ったテーマで議論がありました。
私のささやかな質問に、識者の方々が話しを発展させながら答えてくださり、すっかり気をよくしてあちこちのイベントに参加しながら残りの数日を楽しく過ごしました。
ポスター発表にはたくさんの方が立ち寄ってくださり、用意したフライヤーも役に立ち、甚く満足して帰国しました。
さて、この「インタラクション」という言葉は様々な文脈で使われますが、認知科学の方法論としては、従来の認知科学やAIを含む情報科学ではなしえていない、「状況に応じて、人と自然に、かつ、持続的にインタラクションが可能な人工物を設計するための基礎理論」を指します。(コグニティブ・インタラクション. 植田一博・大本義正・竹内勇剛 著, (株)オーム社, 2022)
人は基本的に、他者と意図や嗜好性を共有し、協同作業を成し遂げる能力を持っており、これがチンパンジーとの違いだといわれています。(p.30)
AI も同様に、人の意図や選好・信念を推定し、関心や目的などの志向性に沿った行動を示せれば、より円滑なインタラクションが可能になります。
そのために、AIにいかにうまく人の意図を推定させるか、いかに人の目的に即した反応をさせるか、の実現を目指した方法論が書かれています。
読んでみて特に印象に残ったのは、人がどのような他者モデルを持ち(=学習し)更新していくのかを理解することが非常に重要なのだ (p.2) 、というくだりでした。それは自覚すること自体が非常に難しい。だからこそ方法論の理解が必要なのだな、と腑に落ちました。
今回読んだ コグニティブ・インタラクション ( 植田一博・大本義正・竹内勇剛 著, (株)オーム社, 2022) には、各ページに注釈がついていて エスノグラフィ、エージェント、コグニティブ・コンピューティングとコグニティブ・インタラクションの違い、などtechnical termの定義がわかりやすく書かれています。
後半では分析の方法論(時系列分析・機械学習など)が体系化されていて、教科書みたいだな、と思ったらやはり学部の教材でした。