ある日、アメリカの数学者ジョージ・デイヴィッド・バーコフ(1884 - 1944)の『美の尺度』(Harvard Press, 1933)という本を知りました。大学図書館で文化財として大切に扱われている貴重本でした。
地下2階の病院の受付のようなガラス戸がついた貴重本受付カウンターの奥から、白い袋をかぶった女性が「閲覧は2時間まで、コピーは20ページまでです。コピーしたい箇所を指定すればこちらでコピーします。」と渡してくれました。
その本は図鑑並みに大きく重い本でした。既に絶版で、amazonで古本がたまに出ます。
Aesthetic Measure (1933)
バーコフはこの本で 基本図形、音楽、テキスタイルなどの美しさを
M=O/C
Measure (美度) = Order (秩序) / Complexity (複雑さ)
という式で定量化しました。
例えば 多角形の美しさを測る場合、式は次のように発展します。
O=V+E+R+HV-F
V : 垂直対称 (+)
E : 平衡 (+)
R : 回転対称性 (+)
HV : 水平-垂直ネットワークとの関係 (+)
F : 不満足な形 (-)
==> 頂点と頂点、頂点と辺、平行な辺の間の距離が小さすぎたり、
角度が0 ° または180°に近すぎたり、
その他のあいまいさ、
支えのない辺、
いびつな対称性 などのこと。
バーコフによれば、正方形の美しさは1.50、長方形は1.25、星形は0.90となるそうです。
近年は機械学習で絵の美しさを測る研究が盛んで、バーコフの美の尺度をもとにしたアプローチもあります。約100年前のアイデアがAIで実装されるとはすごいですね。
後に、バーコフが高く評価されているのは彼の提案した美の方程式が正しいからというよりも、曖昧な美を簡潔に表現したからだ、とも言われていると知りました。