VRゴーグル
designing plus nine という、東大と芸大がコラボしたアートサークルに入っています。
2年前、帰りにメタバースの話しになり「絶対これ読んだほうがいいですよ!」と 世界 2.0 (佐藤航陽著, 幻冬舎, 2022)を勧められました。それ以来、何かとメタバースが気になっています。
まず読んだ感想は、歴史、経済、哲学を根底に「こうあるべき」が書かれていて、壮大な映画のような印象を持ちました。読みやすく示唆に富んでいます。
メタバースとは meta = 概念を超える + universe =宇宙 を組み合わせた造語で、仮想空間とそのサービスを指します。オンラインゲームだけではなく、学習・医療・人の交流に利用されつつあり、最近ではVRゴーグルを装着せずともメタバース空間を楽しめるAR(Augmented Reality)も増えているようです。
著者は 日本経済復興のカギはメタバース以外ない、と指摘しています。理由は(1)量子コンピューター、宇宙、軍事など他産業で日本は他国にかなり遅れを取っているので不利、(2)日本は漫画・アニメ・ゲームのコンテンツ大国で「人材・知財・文化」の独り勝ち状態なので ゲームから発展したメタバースで日本は非常に有利だからだそうです。
途中、メタバース導入の1例として「メタバースと宇宙の協業」とあり、以前 JAXAで派遣で働いていた身としてかなり気になり 友人に聞いたところバスキュールさんを紹介されました。メタバースといえばバスキュールさん、なのだそうです。
さて、世界 2.0 は「メタバースとは新しい世界を創造すること (p.62)、(世界の創生に誰もが参加できるので)神の民主化 (p.67)」と表現しています。本の後半では その世界を創造するために知っておくべき仕組み、メタバースの「視空間」と「社会的な機能」についてかみ砕いて説明しています。
個人的にとても興味を持ったのが 目に映る空間が自然と感じるのか、不自然と感じるのか、のくだりです (p.123)。AIの不気味の谷 の話しにも通じますが、リアルな自然さそのものに作りこむべきなのか、多少 人工的な見た目に寄せたほうが”自然”なのか。実際のところ、そこをどう判断してメタバースを創っているのか興味が湧きました。
それに、人は流れる景色をほぼ覚えておらず目印をピンポイントで覚えているだけ、「日本っぽさ」「東京っぽさ」は看板と道路の区画で表現可能、人は自分が知っている過去の経験と類似点を見い出せない限り 作品の世界観を楽しんだり没入したりできない (p.135) 、などの指摘も、認知科学的に論拠を探したくなる非常に興味深い指摘です。 いずれここにその知見のリンクを張ります。
世界がガラッと変わる瞬間を「水が氷に変わるように (p.169)」と表現するなど、イメージが浮かびやすい表現が全体的に多くわかり易い。
最後のほうには「なりたい自分で生きていく」など著者の熱い人生哲学も盛り込まれていて、引き込まれます。
著者の佐藤さんは お金 2.0 という本も書いています。どうりでところどころ株の値動きの話しにも受け取れるところがあったんだなぁと、腑に落ちました(笑)きっとそちらもわかりやすいと思います。
ちなみに 2.0 とは バージョンアップする という意味であって、 視力ではありません。
メタバースの理解に「竜とそばかすの姫」と 古代生物を実物大で実感できる携帯アプリ「LOST ANIMAL PLANET」もオススメです。
AIの不気味の谷の論文も ひとつご紹介します。顔の人間らしさは、口や顎などの局所的なパーツで判断されているようです。
Imaizumi, Taku;Li, Lu;Ueda, Kazuhiro. Does Machine Learning Replicate the Uncanny Valley? An Example using FaceNet. Proceedings of the Annual Meeting of the Cognitive Science Society. Vol 45