『TAMING UNCERTAINTY』(R, Hertwig et al., MIT Press. 2019) から、7つめの論文「Adaptive Exploration: What You See Is Up to You (D. U. Wulff, D. Markant, T. J. Pleskac, and R. Hertwig)」をご紹介します。
この論文では 視線と意思決定の関係性をモデル化し、Choice from Accumulated Samples of Experience (CHASE)と名付けています。
著者は「単に目の前にあるので見た、限られた視覚情報」で選択することを説明的意思決定、「探索的にものを見て得た視覚情報」で選択することを経験的意思決定と呼んでいます。
これまで 視覚情報は記憶として扱われ、選択(=意思決定)の最後に 記憶から引き出して参照する情報でしかなく、意思決定プロセスのステップのひとつとしては勘案されていませんでした。
しかし「何をどれくらい見るか」が意思決定にかなり影響することがわかってきて、これまで言及されていなかった「探索的に見る時間(=経験)と意思決定」の関係性を同時にモデル化してみせた点がこの研究の新規性です。
いかに見るのかが大事、ということは いかに見せるかも大事、ということで 互いの相互作用もありそうです。
視線は時系列データなので、時間の長さが問題になってくるのですね。
視線に限りませんが 選択(意思決定)対象の時点もキーですね。目の前の事柄について選択するのか、かなり先の事柄を選択するのか。
ここで従来であれば ベイズの確率論で計算精度をいかに上げるかの話しになるところを 『TAMING UNCERTAINTY』は いえいえ、そうではなくて 不確かな状況下のごく限られた情報であっても 人は的確に判断できるツールを持っているはずなので、それは何なのか検討しましょう、と言う主張をしているのです。